メタップスの仮想通貨会計処理を図解してみた(ICO会計処理考察有)
先月、株式会社メタップスより、第1四半期報告書が公表され、仮想通貨の会計処理の取り扱いが注目されました。
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今回はメタップスの行った仮想通貨の会計処理を一部図解してまとめてみました。
まずは大まかな分類です。
今回、メタップスは仮想通貨を大きく三つに分けて処理しています。
①トレーディング目的の仮想通貨
トレーディング目的、つまり売買目的の仮想通貨については公正価値評価(時価評価)で表示し、また簿価(取得価額)との差額を利益又は損失として処理してます。
また商品や材料といった棚卸資産で表示します。
例えば100円で買った仮想通貨が120円になった場合、棚卸資産に120円で表示するとともに、差額の20円を利益として処理します。
②顧客から預かった仮想通貨
顧客から一時的預かっている仮想通貨についてもトレーディング目的と同じく、時価で表示します。また分類も棚卸資産です。
しかし、時価と簿価の差額は利益と損失ではなく、預託時に計上した負債(義務)を変動させます。
例えば、100円で買った仮想通貨が120円になった場合、棚卸資産に120円で表示するとともに、差額の20円を負債として計上し、負債つまり返さないといけない額を120円で表示します。
③その他の仮想通貨(主にICOで受け取った仮想通貨)
その他の仮想通貨については無形資産として処理するとともに、取得価額で表示します。時価が変動しても、処理はしません。
また仮想通貨は使用期限がなく、交換手段として利用される限り存続すると考えられるため、減価償却は実施しません。(減損判定は有り)
ICOの会計処理
今回、主にICO(Initial Cion Offering)で取得した仮想通貨を③で処理しました。
ICOとは仮想通貨を発行し、当該仮想通貨を販売することで、資金調達する方法です。
IPO(Initial Public Offering)新規株式公開と似ていますが、IPOでは株式を発行するのに対して、ICOでは仮想通貨を発行しています。
今回メタップス(子会社)はICOにて、メタップス独自の仮想通貨『plusコイン』を発行し、販売することで、仮想通貨『イーサリアム』を入手しました。
その結果、受け取った『イーサリアム』を取得時の価額で表示しています。
また受け取った『イーサリアム』の相手勘定科目としては収益でも資本でもなく負債として計上しています。
これは『plusコイン』を配布者に対する、サービス提供義務を負債として計上した為です。
例えば、ICOにより、イーサリアム100円分を取得したとすると、無形資産に100円で計上します。一方100円分を将来提供する義務として、負債計上しています。
今後の会計処理について
今後ICOで処理した、仮想通貨『イーサリアム』の資産とその負債はどうするのか。
まず『イーサリアム』については、サービスの対価として利用するそうです。
例えば、120コイン分のサービスの提供を受けた代わりに100コイン分の『イーサリアム』を対価として支払えば、100コイン分を資産から消すとともに、差額の20コイン分を収益(利益)とします。
一方負債については、義務の履行が完了した時に負債を消し、収益を計上すると思われます。
以上が大まかな仮想通貨の会計処理です。
(ここでは割愛しますが、独自の仮想通貨『plusコイン』については0円評価となってます。)
ICO会計処理に対する独自考察
ICO会計処理については2018年3月時点で、基準も公開草案もありません。
今回のメタップスのICO会計処理はメタップスの監査法人であるあらた監査法人と協働し独自で処理したと思われます。
ICOはあくまでも仮想通貨の販売という側面があるため、売り上げと考えることもできますが、収益計上要件の一部である義務の履行が実施できていないため、繰延収益として負債に計上する判断は妥当であると考えます。
ただ、ICOで取得したイーサリアムについては活発な市場がある仮想通貨であり、時価評価でもいいのではと今回考えました。
しかし、イーサリアムについては、決算時までに価額が5倍上昇するなど、価額変動が激しいことから、無理に時価評価せず、メタップスが取得原価で処理したのは、仮想通貨本来の実態を示す会計処理としてよかったのではないかとも考えます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。