まだ確認状紙で送ってるの?
先週こんな記事が会計士業界で話題になりました。
大手監査法人がタッグ 取引確認システムを共同開発 :日本経済新聞
記事を簡単にまとめると、監査で発生する煩雑な業務を減らすために、監査法人が共同でシステムを開発するという内容です。
そして、こちらの記事では、煩雑な業務の例として「確認」手続きを挙げ、新システム導入によって、手続きの負担を軽くすることが期待されていると記載されています。
現在の一般的な「確認」の手続きは紙媒体である「確認状」を企業に発送して、返事を紙媒体で回収する手続きが一般的ですが、新システム導入によって、オンラインのやりとりだけで完結させる方法を検討しているそうです。
紙媒体でのやりとりだった「確認」が電子化される。
紙媒体でひたすら確認状を送っている会計士にとって、今回の記事は朗報なのです。
電子メールで確認はダメなの?
今回、上記の記事を読んだ「会計監査を知らない一般的な人」はこんな疑念をもっているのではないでしょうか。
『システム導入なんかしなくても、確認手続って電子メールでやればいいんじゃないの?』
はい。ごもっともです。
電子メールがここまで発達していなかった、20、30年前ならともかく、誰もがメールアドレスを持っている時代に、なんで紙媒体でやりとりしてんの?って疑念を持つのが当たり前です。
しかし、いまでも確認状は紙媒体でのやり取りが一般的なのです。
なぜか。
それは、「信頼性の確保」が原因なのです。
電子媒体より紙媒体の方が信頼性がある?
公認会計士の団体である日本公認会計士協会は電子媒体でのやり取りを否定しているわけではありません。
しかし、紙媒体の場合と比較して、電子媒体での場合は、
「回答の信頼性に影響する可能性がある追加的なリスクが存在する」
と公表しているのです。(IT委員会報告書38号「電子的媒体又は確認に関する監査上の留意点」より2010年5月)
つまり、
「メールでのやりとりだと紙での郵送よりも回答の信頼性にリスクがあるよ」
って言っているのです。
リスクって何でしょうか?
そこについても協会は言及しています。
例えば、
「回答が適切な情報源から得られていないリスク」
「確認回答者が回答権限をもっていないリスク」
とかです。
(*・〜・*)?
理解できてますかね?
詳しくは、上記の報告書に載ってるので、興味ある人は是非読んでください。
ここで僕が言いたのは、リスクの中身ではなく、
「お上である会計士協会」が電子的な確認手続にはリスクがあると公表している、
という事実があることです。
協会の報告を受け、監査法人はどうしたか?
上記の報告書の結果、監査法人はどう対応したでしょうか。
答えは、もうお分りですね。
電子媒体での確認手続はリスクがあるとして、今までやっていた紙媒体でのやり取りをそのまま続けているのです。
電子媒体が絶対にダメなんていう事はどこにも書かれていないんですよ。
けれども、信頼性欠如のリスクを回避するためには、「電子署名」だとか「秘密鍵方式」だとか色々しないと紙媒体より、信頼性が確保できないんですって。
お上が言ってるんだからしょうがない。
良くも悪くも、監査、いや監査法人で、1番大切なのは監査品質です。
その品質の確保の為には、信頼性にリスクがある手続きをする事はしない。
責任を負うパートナーがリスクを負うような手続きをOKするはずはありません。
その結果、今でも紙媒体の確認状が主流なのです。
信頼性という名目を盾に、非効率なこと今でもやっているのが監査の現状です。
非効率を効率的するには痛みが必要
上記の記事は、現場の会計士全員が感じていた非効率を効率化できるシステムとして注目されています。
効率的かつ監査の信頼性を保てる技術だからです。
今までは、非効率だとわかっていたけど、思考を停止して作業していました。
今後、テクノロジーがその文化を徐々に壊し、輝かしい未来を生み出すのです。
ただし、副作用として『旧会計士』も壊されます。
今流行りの言葉で言うと『会計士1.0』はテクノロジーによって消されます。
そして、テクノロジーに消されない『会計士2.0』だけが生き残ります。
『会計士2.0』とはいったどんな会計士なのか。
一つわかるのは時代に合わせて変革した会計士だという事です。
変革した会計士が生き残り、変革出来なかった会計士は消える。
効率化には痛みが必要なのです。